座談会・シンポジウム

2025年9月20日(土)16:30~18:10
座談会「『バリバラ』の障害学――障害学をバリバラ化する?!」

司会:稲毛和子(明治学院大学)
登壇者:
玉木幸則(出演者)
東 佳実(出演者)
森下光泰(ディレクター/プロデューサー)
空門勇魚(ディレクター/プロデューサー)
岡原正幸(慶応大学名誉教授)

企画趣旨:
2010年にスタートしたNHK『バリバラ』は、2025年3月に15年間の放送を終えました。
『バリバラ』は当事者中心の番組作りをモットーに、とても革新的で挑戦的なテレビ表現を追求してきました。「笑いは地球を救う」や「Show-1グランプリ」など、魅力的な企画を通して『バリバラ』が実践したことは、社会変革そのものでした。その挑戦は、既存の障害観の転換を図るものであり、障害学が掲げるミッションと同じものだと言っていいでしょう。
しかし、いま障害学は『バリバラ』が残したようなインパクトを社会に投げかけられているでしょうか?障害学はむしろ『バリバラ』から学ぶことがたくさんあるのではないでしょうか?
そんな関心を持って、座談会「『バリバラ』の障害学――障害学をバリバラ化する?!」を開催します。番組出演者の玉木幸則さん、東佳実さん、制作の森下光泰さん、空門勇魚さんを大阪からお迎えし、『バリバラ』15年の歴史を存分に語っていただきます。障害学からは岡原正幸さんに登壇していただき、刺激的なフリートークを展開します。

登壇者プロフィール:
玉木 幸則 (たまき ゆきのり)氏
「バリバラ」のご意見番として番組開始から終了までレギュラー出演した。
Eテレには「バリバラ」の前身番組である「きらっといきる」から出演。現在は講演会や研修会講師を務めている。

東 佳美 (あずま よしみ)氏
2019年6月から「バリバラ」のコメンテーターとしてレギュラー出演した。
現在は自立生活センターで当事者活動をしている。

森下 光泰 (もりした みつひろ)氏
1997年NHK入局。2015年からおもにチーフプロデューサーとして「バリバラ」を制作。
すべてのマイノリティを対象とする番組への移行に中心的に関わった。

空門 勇魚 (そらかど いさな)氏
2006年NHK入局。「きらっといきる」の変革期と、「バリバラ」の立ち上げメンバーの1人。途中、別番組を経て2020年にふたたび大阪放送局へ。
「バリバラ」には、ディレクター・デスク・チーフプロデューサーとして携わった。

岡原 正幸 (おかはら まさゆき)氏
慶応義塾大学名誉教授。障害学会の設立当初から活動、主に障害者とセックスをテーマにする。『生の技法――家と施設を出て暮らす障害者の社会学』(共著、藤原書店、1990年)をはじめ、多くの著作がある。

2025年9月21日(日)15:00~17:30
シンポジウム 「医学研究における当事者参画」

司 会:熊谷晋一郎(東京大学)
登壇者:
植村 要(国立国会図書館)
大谷いづみ(立命館大学)
武藤香織(東京大学/理化学研究所)
山田悠平(一般社団法人精神障害当事者会ポルケ)

企画趣旨:
第二次世界大戦中に医師が加担して行われた人体実験への反省を踏まえ、1964年に世界医師会によって「ヘルシンキ宣言」が定められた。「ヘルシンキ宣言」は、人を対象とした医学研究の倫理原則として、国際的によく参照される文書の一つであり、これまでに計10回にわたって改訂されている。
「ヘルシンキ宣言」では、脆弱な立場の人々(vulnerable population)を研究から保護されるべき対象と位置づけ、かれらを医学研究の対象にすることに慎重な立場をとってきた。しかしながら、その結果として、脆弱な立場の人々の健康や二次障害に関する研究や医療開発が遅れ、さらに健康格差拡大につながったとの批判が起きており、医学研究における多様性と包摂の議論が喚起されている。
2024年秋に改訂された「ヘルシンキ宣言」では、脆弱な状況にある個人、グループ、コミュニティを「研究に含めることによって生じる害」(harms of inclusion)と同時に、「研究からの除外によって生じる害」(the harms of exclusion)も考慮する義務が追加された(第19条)。また、医学研究の参加候補者および参加者、そのコミュニティによる、医学研究の開始段階からの有意義な参画も推奨されている(第6条)。
当事者参画を推奨する倫理は、倫理の構築過程そのものにも適用される。今般の改訂は、「障害当事者を対象とした研究倫理」から、「障害当事者とともに創る研究倫理」への転換点になりうる変革ともいえるだろう。一方で、形骸的な参画(tokenism)を通じた搾取や人権侵害も危惧される。
今後、医学研究者から障害当事者への接触が増えることも見越し、その備えとして、本シンポジウムでは、障害学の視点からこの変革の意味をとらえなおすことを試みたい。

 

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