萬代由希子(関西福祉大学)
障害当事者の意見把握における地域自立支援協議会障害当事者部会の機能と役割
報告要旨
本研究は、障害当事者の意見把握における地域自立支援協議会障害当事者部会の機能と役割について考察することを目的とした。研究対象は、A市地域自立支援協議会障害当事者部会の活動に参加する10名、全体会の委員10名、合計20名であり、半構造化面接におけるインタビュー調査を行った。データは、KJ法にて分析を行った。結果、障害当事者部会の機能と役割として、障害当事者が自ら意見を述べる場となっていること、全体会では表出されにくい障害当事者の意見をより丁寧に把握できること、障害当事者同士の相互理解が深まること等が明らかとなった。これらの結果から、障害当事者部会の活動は、障害当事者の発信力を高める役割を果たしており、今後の当事者参画の促進に資する可能性が示唆された。
報告原稿
1.研究の概要
本研究は、障害当事者の意見把握における地域自立支援協議会障害当事者部会の機能と役割について考察することを目的とする。障害者権利条約のスローガンである“Nothing about us, without us”が示すように、障害者福祉施策の策定過程においては、障害当事者の参加・参画が強く求められている。地域自立支援協議会は、地域の実情に応じた政策への提言を行う機能をもつが、その中での障害当事者の参加については、笠原(2018)が研究しており、障害当事者の参画が十分に進んでいない現状が指摘されている。
A市においては、2022年度から地域自立支援協議会障害当事者部会の活動を通じて、障害当事者の意見把握するための取り組みが進められている。障害当事者部会は、全国的には障害当事者による様々な活動が行われているが、意見把握を目的とした活動を積極的に展開している地域は少ないのが現状である。
そこで本研究は、A市の障害当事者部会の活動に参加する方、地域自立支援協議会委員へのインタビュー調査を行い、その機能と役割について考察する。
2.研究方法
研究対象は、a)A市地域自立支援協議会障害当事者部会の活動に参加する10名(地方自治体職員2名を含む)、b)全体会の委員10名、合計20名であり、半構造化面接におけるインタビュー調査を行った。インタビューでは、今年度の障害当事者部会の活動についてどのように思いましたか、活動を通じての障害当事者の意見把握についてどのように思いますか等について伺った。インタビューデータは、KJ法にて分析を行った。
調査では、研究協力者全員に書面を用いて口頭で説明し、書面にて承諾を得て実施した。研究協力者に協力を依頼する手続きにおいては、身体に障害があり自筆が難しい方には、同意書に代諾者の欄を設けること等の合理的配慮を行った。また、本調査への協力は任意とし、辞退によって何ら不利益も生じないことを説明した。なお、2024年に開催された関西福祉大学社会福祉学部研究倫理審査会の審査・承認を得て、実施した(承認番号:第6-0743号)。
3.研究結果
インタビュー調査のデータをKJ法で整理し、大項目は【 】、中項目は〔 〕、小項目は「 」で整理した。【障害当事者部会】の〔機能〕としては、「全体会で言えない部分をより細かく把握できる」ことから、障害当事者の意見表出の補完機能を果たしていることが窺えた。また、「障害当事者同士のお互いの理解が深まる機会になった」ことから、ピア交流の機能が見られた。さらに、「障害当事者の方を集めて聞く機会がなかなかなく、他の人のことも分かる」ことから、障害当事者間の情報共有機能が窺えた。
【障害当事者部会】の〔役割〕としては、「以前は無かったので、意見を言う機会ができた」ことから障害当事者の参加機会を保障する役割を担っていることが示唆された。そして、「『地域アセスメント』として、サービスを利用している障害当事者の把握」ができることから、地域ニーズの把握・評価機能の役割を担っていると考えられる。さらに、「正しい確かな知識を渡す場としても有効」であったことから、情報提供・啓発の役割も果たしていることが明らかとなった。
【障害当事者部会】の〔課題〕としては、「テーマをどのように設定するかが課題」とあり、テーマによって障害当事者同士が話しやすい場合、話しにくい場合があることが示された。また、「知的障害のある方は、内容が聞いていて少し難しかった」とあり、合理的配慮の必要性も課題として挙げられた。さらに、「精神障害がある方の参加が少ないのが課題」との意見もあり、より多様な障害当事者の参加等が今後の課題とされた。
4.考察
障害当事者部会は、単なる意見収集の場にとどまらず、障害当事者の意見表出の補完、ピア交流、障害当事者間の情報共有、障害当事者の参加機会の保障、地域ニーズの把握・評価機能、情報提供・啓発など、多面的な機能と役割を担っていることが明らかとなった。これらの結果から、部会は、障害当事者の発信力を高める役割を果たしており、障害当事者のエンパワメントを促進する実践の場として機能していることが考えられる。そのため、障害当事者部会は、今後の当事者参画の促進に資する可能性を有している。
■謝辞
本調査にご協力いただきました皆様に、感謝礼申し上げます。また、本研究はJSPS科研費20K13748の成果の一部である。
参考文献
・笠原千絵(2018)「地域自立支援協議会における障害者の参加の条件と機会 -6地域における自治体担当者と関係者へのインタビュー調査の分析」『教育総合研究叢書』11,119-134.
・笠原千絵(2023)「地方自治体の障害福祉政策において成果をもたらす障害者の参加と協議の特徴:尼崎市自立支援協議会ガイドライン検討部会議事録の分析」『日本の地域福祉』14,56-68.