ポスター報告 21

伊藤芳浩
聴覚障害者と情報格差について
報告要旨
聴覚障害者は、聴覚の問題に加え、情報障害という二次的な障害も抱えています。これは日常生活の多くの場面で不便を生じさせます。日本では、身体障害者手帳を持つ聴覚障害者が約34万人おり、その中で手話を使用する人は約8~9万人です。彼らは情報へのアクセスに大きな格差があり、特に手話使用者は言語的マイノリティとして更に不利な状況にあります。
情報保障は、手話通訳や文字通訳などを通じて情報を公平に受け取れるようにすることです。しかし、日本では支援者の高齢化や報酬の地域差などの課題があり、十分な情報保障が提供されていません。
教育面では、情報保障の不足が学業成績に影響を与え、労働面では給与の低さやキャリアアップの機会の不平等が問題です。さらに、災害時には避難情報の伝達が困難で、安全が脅かされることがあります。生活面では、字幕放送や手話放送の普及が進んでいますが、まだ十分ではありません。
これらの問題を解決するためには、社会全体での理解と支援が不可欠です。聴覚障害者が直面する情報格差を解消し、公平な社会を実現するための取り組みが求められます。
報告概要

聴覚障害者と情報格差について

NPO法人インフォメーションギャップバスター理事長  伊藤 芳浩

聴覚障害者の現状
・身体障害者手帳所持者 : 約34万人 (人口の0.28%)
・手話使用者 : 約 8-9万人
・難聴者: 人口の約10%

主な課題
・情報へのアクセス格差
– 音声情報の取得困難
– 視覚的情報への依存

コミュニケーションの困難さ
– 多様なコミュニケーション手段(手話、筆談等)
– 通訳者の確保・育成の課題

社会的立場の不利
– 言語的マイノリティとしての立場
– 教育・就労機会の制限

情報格差の具体例
教育
・ 高等教育での情報保障の不足
– ノートテイク : 最も一般的
– パソコンテイク: 増加傾向
– 手話通訳: 実施は1-2割の学校のみ
・初等中等教育での地域格差
– 小学校での手話通訳: 約10%
– 小学校でのノートテイク・字幕: 約20%

労働
・平均給与: 聞こえる人の67%
・昇進経験率: 16.1% (他の障害と比べ低い)
・転職経験率:40.6% (高い)

災害時
・東日本大震災 死亡率が約2.5倍
・避難情報の伝達困難
・避難所での情報取得の困難

必要な支援と改善策
・情報保障の充実 (手話通訳、文字通訳等)
・教育現場での専門的支援の強化
・職場での長期的な合理的配慮
・災害に強い通信インフラの整備
・メディアのアクセシビリティ向上(字幕・手話放送の拡充)
・公共施設のバリアフリー化推進

政策提言
1. 公共調達要件に情報アクセシビリティ対応を必須化
2. 情報アクセシビリティ法の実効的な施策推進