髙阪悌雄
重度訪問介護の対象拡大実現の背景 ―関係者の証言および理論的フレームからの考察―
報告要旨
後藤玲子が提唱した公共的相互性とは、負担に対する給付、貢献に対する報酬といった従来の公平性概念を乗り越え、差異ある存在に対する等しい関心と尊重を要請する平等規範に基づく共通ルールを市民が受容するところに特徴がある。そのため後藤は、ロールズが正義理論の構築に際して、後回しにしようとした困難事例を、残余あるいは例外とせず、正確に把握し、考えうる最も適切な社会的支援を考え、そしてそれを作り出し、つなげていくことが大切であるとした。
2012年6月、新たに成立した障害者総合支援法の下で重度訪問介護の対象は精神・知的障害者へと拡大、2014年4月から運用がスタートした。この対象拡大は、生活の場が家族や施設といった狭い選択肢しかなかった事例を社会的包摂に基づく支援につなげたところに特徴がある。対象拡大には、具体的に公共的相互性とどう結びつき、そこにはどのような政治力学が働いたのか。制度策定にかかわった当事者や関係者へのインタビュー、審議会等の資料を基に明らかにしていく。
報告概要
報告パワーポイントファイル(PPT)