第20回大会を記念し、記念対談とシンポジウムを、zoomウェビナーを使用してハイブリット開催いたします。ご質問は、zoomのQ&A機能を利用いたします。
情報保障として、手話通訳・文字通訳の用意があります。
1.基調講演
開催日時:2023年9月16日(土曜)17時20分から18時20分
会場:メイン会場(ENEOSホール)、zoomウェビナー
サテライト会場(コンベンションホール)からもご視聴いただけます。
テーマ:障害学会20周年記念対談ー前に進むこと、置き去りにしないこと
登壇者
石川准(障害学会会長)・熊谷晋一郎(第20回大会大会長)
趣旨
本対談では、障害者政策委員会の前委員長・石川准と、現委員・熊谷晋一郎が、自らの経験を振り返りながら、「誰ひとり置き去りにしないで前に進む建設的対話の場を生み出し維持するための条件」について考える。
様々な障害者団体の代表者が集まり、障害者計画の立案や監視作業を行う障害者政策委員会で、委員長がどのように委員会をまとめていくのかに関する現象学、あるいはエスノメソドロジー、あるいは当事者研究をすることは、政策立案や評価のプロセスでしばしば登場するキラーワードである「建設的対話」の具体的実践を考える上で重要なのではないか。
誰ひとり置き去りにしたくない、でも時間は限られており一定の結論を目指して前に進めなくてはならない。目の前には読み込める筈もない大量の資料。もっとも置き去りにされた経験やニーズこそが言葉になりにくい現実。そして難しい重要案件ほど、委員会の外で、委員長と事務局、各省の間で頻繁に行われる議論の整理、調整、修正の作業によって大筋が合意されていく。委員はここでも置き去りになる。
こうした、いわば「障害の政治」は、「多様性と包摂の時代」においても、現在形の課題として私たちの前に横たわっている。では、障害学は、この問いにどのように向きあっていくことができるのか。ふたりの対談を導きの糸にして、これからの障害学を考えたい。
2.シンポジウム
開催日時:2023年9月17日(日曜)14時15分から17時15分
会場:メイン会場(ENEOSホール)
テーマ:障害学の回顧と展望 社会モデルの現在
シンポジスト
川島聡(放送大学教授)
「社会モデルと人権モデル―権利条約時代の障害学・再論」資料(Word)
飯野由里子(東京大学大学院教育学研究科特任准教授)
「インターセクショナリティを意識した障害学研究のために」資料(PPT)
辰巳一輝(大阪大学大学院博士課程院生)
「批判的障害学と「社会モデル」」資料(PPT)
コーディネーター
星加良司(東京大学大学院教育学研究科教授)
趣旨
2003年に障害学会の設立総会が開かれてから、20年が経つ。この間、日本の障害学は、従来の障害研究のパラダイムを超える新たな実践的・理論的な知を生み出してきた。その中核となってきた理論的・認識論的なフレームワークが「障害の社会モデル(social model of disability)」であったことについて、概ね異論はないだろう。そして、今なお「社会モデル」の政策論的・運動論的・学術的な意義は失効していないように見える。
ただし、この「社会モデル」はM.オリバーが1983年にその概念を提起してから40年が経過した現在、学術的な観点からはその限界や難点が厳しく論難され、実践的な観点からは新たな「モデル」の提示が要請されてもいる。率直に言えば、世界的には「過去の遺物」と捉えられるものになりつつあるといっても過言ではない。私たちはこの「日本」と「世界」のギャップをどのように理解すべきだろうか?
その答えに迫る鍵は、「社会モデル」が提起されてから20年後に障害学会が設立されたという、日本の「後続性」にあるのかもしれない。この「20年のずれ」が何をもたらしたかについては、少なくとも2つの方向性の解釈がありうる。ひとつは、単純な「遅れ」が生じている可能性である。日本における「社会モデル」の理解は、英語圏のそれに追いついておらず、それゆえにいまだ「時代遅れ」の考え方に固執してしまっているということだ。もうひとつは、「社会モデル」自体に「進化」が生じている可能性である。英語圏から遅れる形で「社会モデル」を輸入した日本においては、既にその段階でなされていた様々な「社会モデル」批判を視野におさめた「社会モデル」受容が進んだとも考えられる。だとすれば、英語圏で捨て去られようとしている古典的バージョンの「社会モデル」と、日本で命脈を保っているように見える「社会モデル」とは似て非なるものである可能性は否定できない。
この後者の可能性を踏まえれば、日本の歴史的・社会的・学術的文脈に照らして「今、ここ」の社会モデルの意義と課題を検討し、今後の障害学の発展に対する有用性を見定めることには、英語圏の議論の焼き直しとは異なる固有の意味があるはずだ。本シンポジウムでは、以上の問題意識を踏まえ、法学、哲学、クィアスタディーズの立場から障害問題に関する理論的探究を続けている3人の専門家をお迎えし、「社会モデル」に対する評価を軸に、今後の障害学の発展に寄与する理論的・実践的基盤について議論を深めたい。