障害学会 倫理綱領

〔前文〕
障害学会(以下、学会という。)は、学会会員(以下、会員という。)が研究、教育、学会運営その他の学会活動にあたって依拠すべき基本方針を定め、「障害学会倫理綱領」(以下、綱領という。)として発表する。
学会は、障害を社会及び文化の視点から研究する障害学(Disability Studies)の発展及び普及並びに会員相互の研究上の連携及び協力を図ることを目的として2003年に設立された。以来、学会は、学術研究を遂行するのみならず、新しい価値を創出する創造性及び社会変革に向けた実践性を有するなど、独自の特性を発揮してきた。そのため、障害学に携わる会員には、価値創造及び社会変革を担って社会及び文化に寄与する者として、倫理的で公正な態度が求められている。
また、障害学は人間及び社会集団を対象とするため、障害学に携わる会員は研究、教育、学会運営その他の学会活動における対象者(以下、対象者という。)の人権を尊重しなければならず、対象者のプライバシーの保護、対象者の被りうる不利益への配慮等に留意する必要がある。同時に会員は、研究者としての社会的責任を自覚し、研究の目的、手法、必要性、社会的影響等にも留意する必要がある。
学会は、障害学の研究及び教育の発展及び質的向上、会員相互の交流の活性化、社会からの信頼の維持及び確保等のために、会員が研究、教育、学会運営その他の学会活動において遵守すべき倫理に関する事項を綱領として以下のとおり定めることとする。

第1条〔公正及び信頼の確保〕
会員は、公正を維持し、社会の信頼を損なわないよう努める。

第2条〔研究目的及び研究手法の倫理的妥当性〕
会員は、自己の研究の社会的影響に留意して、研究目的及び研究手法の倫理的妥当性を考慮しなければならない。

第3条〔人権の尊重〕
会員は、人権を尊重しなければならない。

第4条〔プライバシーの保護〕
会員は、対象者のプライバシーを侵してはならないものとし、会員相互のプライバシーの保護に最大限留意しなければならない。

第5条〔差別の禁止〕
会員は、障害の有無、思想信条、性別、性的指向、性自認、性表現、年齢、出自、国籍、宗教、民族的背景、健康状態、家族状況、婚姻関係等によるいかなる差別(合理的配慮の不提供を含む。)もしてはならない。

第6条〔ハラスメントの禁止〕
会員は、ハラスメント(セクシュアル・ハラスメント、パワー・ハラスメント、アカデミック・ハラスメント、モラル・ハラスメントを含む。)をしてはならない。

第7条〔研究資金の適正な取扱い〕
会員は、研究資金を適正に取り扱わなければならない。

第8条〔著作権侵害及び不正行為の禁止〕
会員は、研究のオリジナリティを尊重し、著作権を侵害してはならず、捏造、改ざん、盗用、二重投稿等をしてはならない。
2 会員は、他の者の協力を得て行った研究をもとに成果を公表する場合は、当該他の者の権利を十分に尊重しなければならない。

第9条〔研究成果の公表〕
会員は、研究の公益性及び社会的責任を自覚するものとし、研究成果の公表に努め、社会的還元に留意する。

第10条〔相互批判及び相互検証の場の確保〕
会員は、開かれた態度を保持し、相互批判及び相互検証の場の確保に努める。

附則
1.綱領に関する問い合わせ並びに障害学の研究及び教育に関する倫理的問題への相談等は、学会理事会が対応する。
2.綱領の改正は、学会理事会の議を経ることを要する。
3.綱領は、2024年9月16日から施行する。